節分の日に食べる恵方巻きでは、無言で静かに食べる独特の習慣が存在します。
家族が集まり、無言で食事を共にする瞬間は、時折シュールな雰囲気に包まれます。
この習慣に対して、笑いがこみ上げてしまう人もいることでしょう。
そこで今回は、なぜ喋らずに恵方巻きを食べるのか、そしてその独特な習慣の起源に迫ってみたいと思います。
恵方巻きの起源や歴史は？
まず、恵方巻きの由来やその歴史的背景を振り返ってみましょう。
様々な説があるため、一つの説として理解いただければ幸いです。
恵方巻きの起源は江戸時代から明治時代にさかのぼります。
大阪の花街である遊郭で、芸妓や遊女たちが節分を祝い、商売繁盛や縁起担ぎのために恵方を向いて寿司巻きを食べる習慣が始まったと言われています。
商人たちは、遊女にお新香を巻いた海苔巻きを恵方に向けて食べさせ、これが恵方巻きの起源とされています。
現在は縁起物として親しまれていますが、この風習はもともと芸妓の遊びだったのです。
1932年には大阪鮓商組合がこの習慣を広め、寿司業界を活性化すべく「節分の日に恵方に向いて無言で一本の寿司を丸かぶりすれば、その年は幸運に恵まれる」という広告を展開しました。
寿司店は2月の売上が低迷する傾向にあり、これは売上アップのための工夫だったと言えるでしょう。
私が以前勤務していた大手回転寿司チェーンでも、確かに2月は閑散期でした。
お正月には寿司が繁盛するものの、2月は不振となり、3月や4月には卒業や入学のお祝いで賑わうことを覚えています。
そして1989年には広島のセブンイレブンが恵方巻きの販売を開始し、1995年には全国で販売され、一気に恵方巻きが全国的に知られるようになりました。
恵方巻きの黙って食べる理由には驚きの事実が隠れている！
節分の日に食べられる恵方巻きを黙って食べる習慣には、興味深い理由がいくつか存在します。
現代の価値観から見れば、今の時代ならばそのような行為は訴えられてもおかしくないセクハラに該当するでしょう。しかし、当時はそういった習慣が存在していたのですね。
この説が本当である場合、現代の感覚では恵方巻きを食べる際に一瞬ためらいを感じる方もいるかもしれません。しかし、現在では縁起物として親しまれており、由来には諸説があります。信じるか信じないかは個々の判断に委ねられています。
恵方巻きを食べる際のそのほかの決まり事
恵方を向いて食べる習慣
恵方とは「歳徳神（としとくじん）」が所在する方角で、歳徳神はその年の福徳を司る神様として親しまれています。古くから「何事も恵方を向いておこなえばご利益が得られる」と言われ、節分の太巻き寿司も同様に縁起を担ぎ、恵方を向いて食べるようになりました。
恵方は毎年変わるため、食べる前には方位磁石やスマートフォンのアプリを利用して確認しましょう。
1本を切らずに味わう
包丁で切り分けずに1本まるごと食べることが重要です。これは「幸運が途切れる」「よいご縁が切れる」ことを避けるためです。ひとりひとりが1本を食べ、大勢で食べる際は人数分の恵方巻きを用意しましょう。
巻き込まれた福を逃さず取り込むために、1本を一気に食べるとも言われています。全部残さず食べきれるよう、1本の大きさを調整することもポイントです。
笑顔で楽しむ食べ方の風習
「笑う門には福来る」にならい、恵方巻きを食べる前ににっこり笑うのが良いとの説もあります。黙って食べるとは言っても、美味しい食べ物を前にすると自然と笑顔になります。
難しいことは考えず、和やかな雰囲気で恵方巻きを楽しむのが良いようです。
恵方巻きの具材と食べる時間について
鬼とお多福の面の横に置かれた板皿に盛られた恵方巻きの様子
恵方巻きに使う具材には「これでなければならない」といった厳格な決まりはありません。通常の太巻き寿司の基本具材（だし巻き卵、きゅうり、かんぴょう、桜でんぶなど）に、穴子やうなぎ、えびを加えたものが一般的です。
最近では、マグロやサーモンなどを取り入れ、彩り豊かで贅沢な海鮮巻きも人気。七福神にちなみ7種類の具材を使うのが縁起が良いとされていますが、好みに応じて様々な具材を楽しむ傾向が広がっています。
食べる時間に厳格な規定はありませんが、鬼（＝邪気）が現れるのは未明の時間帯とされているため、夜に食べる方が良いとの説もあります。自身のライフスタイルに合わせて、好きな時間に恵方巻きを楽しむことができます。
喋らないで恵方巻きを食べる理由のまとめ
恵方巻きを無言で食べる習慣には様々な理由があります。この風習は節分の日に特有で、口を利かないことで縁起を担ぎ、願い事に集中し、吉兆を呼び込むと信じられています。
また、昔の文化や歴史的な背景に基づく理由も存在します。
たとえば、商人が芸妓たちに男性の象徴的なものに見立てたお新香巻きを食べさせ、その年の繁盛を願って楽しんだ芸妓遊びが、後に恵方巻きの由来となりました。
これらの理由に基づき、無言で恵方巻きを食べることが、年初における幸運を引き寄せ、心静かに新しい年を迎えるための縁起担ぎとして親しまれています。
以上、「恵方巻きの喋らない理由に隠された驚きの起源！」についてご紹介しました。
